トリウム原子炉 2011 7 17
書名 知っておきたい放射能の基礎知識
原子炉の種類や構造、α・β・γ線の違い、
ヨウ素・セシウム・ストロンチウムまで
著者 齋藤 勝裕 ソフトバンク クリエイティブ サイエンス・アイ新書
トリウム原子炉については、
「二つの原子炉 2011 6 5」で書きました。
今日も、また、この原子炉について取り上げましょう。
(以下、引用)
トリウム原子炉は新しいタイプの原子炉であり、
解決しなければならない問題もありますが、
実は原型炉材は、すでに1960年代に
数年にわたって安全に稼動していたという実績もあります。
今後、各国が本腰を入れたら、
実用的な商業炉の開発は、それほど難しくないかもしれません。
本当の問題点は、ウラン原子炉で完成している現在の原子炉体系、
既存のインフラ群の中に新しいコンセプトのものを、
どのようにして混ぜていくかという、
経済・政治的な面にあるのかもしれません。
トリウムにちなんでは、もうひとつ問題があります。
それはトリウムの産出です。
現在、インドや中国はウラン資源に乏しく、輸入国です。
ところがトリウムに関しては逆になります。
インドや中国に多いのです。
(中略)
トリウム原子炉は今後、中国・インドを軸にして、
世界の原子力に大きな影響を及ぼしていくのではないでしょうか?
日本も準備が必要なのかもしれません。
(以上、引用)
現在の地球の人口は、70億人でしょうか。
人口爆発というと、多くの人は、食糧危機を連想しますが、
実は、エネルギー危機でもあるのです。
新興国や発展途上国の人たちが、
欧米人のような生活を望む時、それは起きるでしょう。
もちろん、彼らが「我々は原始人のような生活のままでよい」と言うならば、
そういう問題は起きないでしょう。
二つの原子炉 2011 6 5
書名 原発安全革命
著者 古川 和男 文春新書
これは、私の思い違いになるかもしれませんが、
私の考えるところを書きます。
トリウム原子炉が、核兵器廃絶の方法となる。
世界には、二つの原子炉があった。
それは、ウランからプルトニウムというサイクルの原子炉と、
トリウムからウランというサイクルの原子炉である。
なぜ、前者は繁栄し、後者は廃れてしまったのか。
前者の方法では、核兵器を作るのは容易であるが、
後者の方法では、核兵器を作るのは非常に困難である。
(冷戦時代、大量の核兵器を作るのは急務だった)。
本書によると、「原発革命」は、次の理由によります。
核燃料は、固体から液体に変える。
ウラン燃料をトリウム燃料に変える。
原発自体を小型化する。
そもそも、原子炉は、「化学プラント」だから、
燃料の形態は、液体であるべきです。
それを固体にすると、リスクが高まる上に、
設備や装置が複雑で巨大なものになります。
その結果、保守・点検が大変なものにもなります。
液体ならば、固体燃料に比べて、設備や装置もシンプルなものになります。
液体燃料は、技術的に可能です。
しかし、なぜ、固体燃料を続けてきたのか。
それは、液体燃料では、原子力産業が「儲からない」からだと推定しています。
固体燃料の方が利益率が高いと思われます。
さて、トリウムのメリットは、他にもあります。
この本では、「トリウムを燃料とすれば、
プルトニウムは、ほとんど生まれない。
それどころか、『トリウム熔融塩炉』でなら、
プルトニウムも炉内で有効に燃やせる」と書いてあります。
次に、資源の問題を書きましょう。
ウランは、特定の国に偏在していますが、
トリウムは、世界中にあると言ってよいでしょう。
もうひとつ、人口爆発の問題を書きましょう。
人口爆発というと、食糧危機を連想しますが、
同時に、エネルギー危機でもあります。
人口爆発によって、食糧が不足しますが、エネルギーも絶対的に不足します。
トリウム熔融塩炉から核兵器を作ることは不可能に近いと思います。
しかも、構造上、テロにも強いのです。
21世紀の原子炉は、
「液体燃料を使う」、「トリウムを燃やす」、
「小型化する」がキーワードになるでしょう。
「万里の長城」のような送電線は、不要となるでしょう。